Cloudflareのシェアについて変な情報が流れています。代表的なものは以下です:
突っ込みどころ満載の情報なので検証します。
検証
検証文面:全ウェブサイトのうち81.2%がCloudflareのCDNを選択していて、圧倒的なシェアを誇ります
- 検証
- このシェアの根拠としては、W3Techs.comのReverse Proxy調査を上げています。しかし、この81.2%というのは、全Webサイトに対するシェアではなく、CDNを利用しているWebサイトにおけるシェアです。そのため、「全ウェブサイト」ではなく「CDNを利用しているウェブサイト」と変更する必要があります。
 
- Cloudflareのシェアは、主に無料CDNの提供により稼いだものであり、高トラフィックな有名サイトでのシェアは3割程度しかありません。
- 例:built with のVerified CDNにおけるCloudflareのシェア
- 上位1万サイト:27%
 - 上位10万サイト:34%
 - 上位100万サイト:52%
 
 
 - 例:built with のVerified CDNにおけるCloudflareのシェア
 - また、国内(JPドメイン)のCDNシェア調査は以下のような結果であり、Cloudflareのシェアは2位です:
- 1位:Cloudfront、50.22%
 - 2位:Cloudflare、34.80%
 - 3位:Akamai、7.68%
 - 4位:Fastly、3.11%
 - 5位:Incapsula、1.65%
 
 
 - 正確な表記
- 全世界でCDNを利用しているウェブサイトのうち81.2%がCloudflareのCDNを選択していて、圧倒的なシェアを誇ります
 - ただし、高トラフィックな有名サイトにおけるCloudflareのシェアは3割程度です。
 - また、JPドメイン・ウェブサイトにおけるCloudflareのシェアは34.80%であり、1位のCloudfront(50.22%)から15.58%の差をつけられた2位に甘んじています。
 
 
検証文面:世界のインターネットトラフィックの25%を担っている。
- 検証
- まず、トラフィックの25%を担っていると記述していますが、トラフィック量でなく、次のようにリクエスト数ベースのようです。
- Cloudflareは、数百万のWebサイトのインターネットリクエストを処理し、平均で毎秒4600万のHTTPリクエストを提供しています。それは、世界のインターネットリクエストの25%となります。
 
 - この「毎秒4,600万のHTTPリクエスト処理」というのはCloudflareの公式情報のようですが、「これが全インターネットリクエストの25%に相当する」ことの証拠は提示されていません。また、トラフィック量やユーザ接触時間に関する調査はいくつかの団体で行われていますが、全インターネットリクエスト数に関する調査を見つけることはできませんでした。そのため、リクエスト数ベースにおいてCloudflareがインターネットトラフィックの25%を担っているとは言えません。
 - ただし、build withの調査結果のように高トラフィックWebサイトにおけるCloudflareのシェアは3割程度であり、全Webトラフィックの25%を担っていてもおかしくはないという状況です。
 - 一方、トラフィック量に関する各CDNのシェアについては、ISP等が運用情報として持っています。一般にこのシェア情報は公開されていませんが、国内ISPにヒアリングするとCloudflareのトラフィックシェアは多くて数パーセント程度のようです。
 
- また、グローバルにおけるCloudflareのトラフィックシェアについても海外ISPで計測していると思われますが、ヒアリング先がありません。そのため、DPIベンダーのSandvineが行っているトラフィックのアプリケーション別シェア調査をベースに検証します。この調査結果は以下であり、Cloudflareが大きなシェアを持っていると思われるWebサイトの配信は全体の10.46%(Marketpace:5.83+Web Browsing:4.63)しかありません。
- Video:65.93%
 - Marketplace:5.83%
 - Gaming:5.58%
 - Social Networking:5.26%
 - Cloud:4.98%
 - Web Browsing:4.63%
 
 - そして、前述のW3Techs調査におけるCloudflareのトラフィックシェアは、グラフから読み取ると20%程度です。そのためグローバルトラフィックに対するCloudflareのシェアは2%(10.46%*20%)ということになります。
 
 - まず、トラフィックの25%を担っていると記述していますが、トラフィック量でなく、次のようにリクエスト数ベースのようです。
 - 正確な表記
- Cloudflareは高トラフィックWebサイトで3割程度のシェアを持っており、Webトラフィックの25%を担っている可能性がある。
 - しかし、インターネットトラフィック量に対するシェアは多くても数%程度である
 
 - 補足
- Marketplace最大手のAmazonは、Akamai+Cloudfrontという構成のようです。また、国内最大手の楽天はAkamaiであり、MarketplaceマーケットにおけるCloudflareのシェアは高くありません。そのため数パーセントのトラフィックシェアというのは多めな見込みであり、実際にもっと低い1%程度というのが実際だと思われます。
 
 
検証文面:米フォーチュン500で30%の企業が導入するCloudflare
- 検証
- 米フォーチュン500におけるCDNシェアを調査した資料は見つかりませんでした。
 - Akamaiは、フォーチュン500の半分以上の企業がAkamaiを使用していると公表しています(2020年)
 - Cloudflare関連の公表情報は以下です:
- フォーチュン1000におけるReverseProxyのシェアは17%(2023年Q1)
 - フォーチュン1000において30%がcloudflareを使用
 
 - また、build withでの高トラフィックWebサイトでのシェアも3割程度であり、フォーチュン1000での導入が30%というのも妥当であると思われます。そのため、日本スタッフがフォーチュン1000と書くべきところをフォーチュン500と大げさに書き間違えたと思われます。
 
 - 正確な表記
- 米フォーチュン1000で30%の企業が導入するCloudflare
 
 - 補足
- 大企業では1社で複数のCDNと契約することが多くみられるため、この30%というのはシェアではなく導入社数である点に注意が必要です。つまり、一つの会社が複数のCDN会社と契約を持っていることは、大企業の場合、かなりあります。