最近、「テレビ局は電波を返せ」という雑なYouTubeやコメントを見かけるので、きちんと考察します。
周波数帯
放送と通信で議論になっているのは470~900Mhz。ここは、到達可能距離と伝送可能量のバランスがよく使い勝手が良い、いわゆるプラチナバンドと呼ばれている帯域です。日本における現在の割り当ては以下のように、低周波数側が放送、高周波数側が通信に割り振られています:
- 放送用:470~700MHz(13~48チャンネル)
- 通信用:700~900MHz(Band 28、18、19、26)
そして、放送用帯域を通信に割り振り直すのが大きなトレンドとなっています。
700Mhz帯
700MHz帯については、一部が放送用として使われいたが、日本を含むほとんどの国で2010~2020年にBnad 28(703~803MHz)として通信用に転用されました。
- 日本
- テレビ49~52チャンネル(698~722MHz)⇒携帯 Band 28(703~803MHz)の一部として転用
600MHz帯
議論する必要があるのはさらに下の600Mhz帯の扱いです。この周波数帯は、米国では2017年、Band 71(617~698Mhz)として放送から通信に転用されました。これは、電波オークションの形で行われ、通信が支払った費用は198億ドル(約2兆円、12年分)です。ただし、このうち117億ドルは放送事業者に補填や移行費用として支払われ、国庫に納められたのは73億ドルです。
日本における600Mhz帯(35~48チャンネル)は、中継局(メイン放送を山間部等で異なる周波数で再送信)や旧独立Uチャンネル局で使われることが多いです。例えば、東京近辺の場合、以下となります:
- 中継局(八王子上恩方、奥多摩)
- 29(563MHz):NHK総合
- 31(575MHz):NHK Eテレ
- 33(587MHz):東京MX
- 35(599Mhz):日テレ
- 36(605MHz):TBS
- 37(611MHz):フジ
- 39(623MHz):テレ朝
- 40(629MHz):テレ東
- 旧独立Uチャンネル局
- 38(617MHz):テレ玉
- 42(647MHz):テレビ神奈川(TVK)
- 46(671MHz):千葉テレビ(CTC)
- 補足:スカイツリー(400、500Mhz帯を使用(600Mhz帯は不使用))
- 16(491MHz):TOKYO MX
- 21(521MHz):フジ
- 22(527MHz):TBS
- 23(533MHz):テレ東
- 24(539MHz):テレ朝
- 25(545MHz):日テレ
- 26(551MHz):NHK Eテレ
- 27(557MHz):NHK総合
以上のように、東京近辺で600MHz帯を開けるには、中継局5局(日テレ、TBS、フジ、テレ朝、テレ東)+独立Uチャンネル局3局を移動させる必要があります。一方、470~600MHzにおいて空いているチャンネルは、9チャンネル(13、14、15、17、18、19、20、28、34)あり、単純には、周波数割り当てのリパック(整理、移動)すれば、すべて収まります。
そして、放送局側の周波数移行費用については、米国のように通信事業者負担とすることが可能です。例えば、米国の場合、1兆円以上が通信事業者から放送事業者に支払われました。
議論
600MHz帯の周波数リパックについては、北米でしか実行されていません。また、既存放送の周波数割り当ても中継局や独立U局を入れるとギリギリです。しかし、もはや2流となった日本の放送・通信を生き返らせるには、積極的に実施すべき(少なくとも議論すべき)施策です。
また、日本でも電波伝送の費用が重い地方局が出始めています。600MHzのリパックは、その延長として「電波伝送を止めてネット配信へ移行するテレビ局に関しては、その費用を通信事業者が補助する」ことも実現可能です。つまり、放送局にとっても、どうせ未来のない電波伝送を止めるなら、その帯域を放送事業者に売り、その代わりにネット配信への移転費用をもらうことが可能になります。
さらに、最終的には、山間部が多いスイスに近い形(全テレビ放送の地上波伝送を廃止)も考える必要があります。ただし、現実的には、災害対策などのために地上波伝送を残す価値もあるため、AMラジオと同じようにNHKのみに地上波伝送を許し、それ以外はすべて廃止という形が良いかな?と思っています。
補足:日本の現状
- 放送:通信規格であるISDBはブラジルに見捨てられガラパゴス化
- 通信:通信インフラの各種ランキングは世界ランク10位以下