2026年時点における米国ローカルテレビに関する規制の状況をまとめます
米国ローカルテレビ局の現状
米国ローカル放送局のうちフルパワー局(約1,800局)は以下の三つの軸で分類される:
- 放送地域(DMA: Designated Market Are)
- ニューヨーク、サンフランシスコ等
- この単位で独占禁止等の規制が行われる
- 放送ネットワーク系列
- 放送コンテンツの系列
- ABC、CBS、NBC、FOX、独立系
- 資本系列
- 放送局オーナーの系列(放送ネットワーク系列とは関係ない)
- 3大グループ
- Nexstar(約164+60局、132DMA)、Gray(約180局、117DMA、Sinclair(約70局、85DMA)
- 現状、全体として分散した構成になっている
- 複数のハイパワー局を持つグループ(非商業ネットワークを含む)は100以上存在
- 単独局も数百程度ある
平均するとDMA毎に約9局のフルパワー放送局が運用されており(大都会では12局程度、地方は5局程度)、中小規模のDMAでは4大ネットワークの系列局がそれぞれある。
補足:米国では、これ以外に低出力のLPTV局が約1,800局があるが、ここで扱う規制の対象とはなっていない。
規制の状況
全国支配に関する規制
39%ルール
ひとつの資本グループ(Nexstar等)が、米国全土で何パーセントの視聴者カバレッジを許すかというルール。設立は1941年、徐々に割合が増やされ1996年に35%、2004年に39%まで拡大。
注意点として、カバレッジは視聴世帯ベースであり、DMA数ベースではないことに注意。例えば、Nexstarは買収前に116DMA(DMAベースでは約55%)でサービスをしていたが、視聴世帯ベースでは70%程度となる。
また、カバレッジ計算においてはUHFディスカウント(UHF帯での送信は、そのカバレッジの半分をカウントする)というルールがある。しかし、デジタル放送ではUHF帯での送信が主流になっており、半分にカウントする意味は無い。例えば、TEGNA買収前のNexstarカバレッジは約39%であるが、これはUHFディスカウントされた数字であり、実際のカバレッジは70%程度である(米国ではVHF帯もまだ少し残っているため78%とはならない)。
- 2026年3月
- FCCおよびDOJ(行政)はNexstarのTEGNA買収を承認。これが実施されると、Nexstarの視聴者カバレッジはUHFディスカウント後も39%を超える。
- ただし、13州の司法長官とDirecTVが連邦地裁へ提訴したため、連邦裁判所(司法)が経営的合併にストップをかけている状況。
- 2026年8月
- FCCは、39%ルール自体を廃止
また、このルールは低出力局であるLPTVには適用されない。
DMA内部における規制
Top-4 Rule
ひとつの資本グループ(Nexstar等)が、同一DMA内で視聴率上位4局を複数所有してはならないというルール。上位局でない複数局(例:1位+5位等)所有に対しては規制されない。1999年に制定、2025年に無効化。
今後の規制
放送局に関する全国支配およびDMA内部規制のルールは無くなり、個別案件に対する審議となった。この背景としては、以下が考えられる:
- UHFディスカウントは無意味
- デジタル放送の主力周波数はUHF帯
- 実効的に39%の2倍である78%まで許すルール
- OTT側は既に100%のリーチを持っている
- 放送波だけを規制するのは時代遅れ
- 地上波の影響力が減少している
- 地上波コンテンツの接触時間は、テレビ受像機において約20%、スマホ等を含む全映像媒体まで拡大させると10%程度しかない
ただし、DMA内部については規制が残ると思われる。現在のところ、いくつかのDMAで上位2局を一つの資本が保持しているが、上位3局を一つの資本が保持するDMAは存在しない。ただし、Grayがルイジアナ州ラファイエットで3局保持の計画を進めているとリークされており、動向が注目されている。
また、NexstarのTEGNA買収に関する裁判についても、このDMA内部における重複局の扱いが大きなキーポイントになると思われる。つまり、買収により、Nexstarは、いくつかのDMAにおいて複数の上位局を持つことになるが、裁判の和解案として、これらについては独立した運用が行われる可能性がある。
参考文献
- NHKデータブック 世界の放送メディア2025