2026WBC地上波問題


2026年WBCが、国内においてはネットフリックスのみの配信(地上波での放送無し)となりそうな事についてのメモ書き。

前回大会(第5回大会:2023)

配信・放送側視点

  • WBC放映権は、前回大会で国内30億円程度、今回はその数倍(100億円程度?)らしい。
  • ネットフリックスの国内売上は1,000億円程度なので、今回の配信費用の多くは販促費で落としていると思われる。そして、ネットフリックスの月額料金は1,000円程度であり、単純にはWBCによる新規加入が1,000万あればペイできることになる。また、国内会員数は1,000万加入程度であり、一時的であっても1,000万人加入者が増えることはサービスの浸透という意味で意味がある。また、ネットフリックスにとって今回の配信は販促活動でしかなく、2027年以降については、2026の効果測定により方針が変わると思われる。
  • 一方のテレビ局(日テレでも広告収入2,000億円程度)は、コンテンツ単位の収支管理を厳密にやっており、広告料で100億円はペイしないという事なのだろう。
  • 可能性として、日本最大の動画メディアであるYouTube(接触時間:NHKと同程度、広告売上:日テレと同等以上)が、放送権を買うという選択もありうる。しかし、既にYouTubeは媒体としての浸透も終わっており、特別なキャンペーン(例:Abemaのワールドカップサッカー2022)を打つ必要はないため、番組としてペイしないコンテンツは買わないのであろう。
  • その意味で、ワールドカップサッカーを200億円?で買ったABEMAも、やっとメディア事業で(無理やり)黒字になったばかりであり、このタイミングでの大規模な赤字コンテンツ投資は行わないと思われる。
  • そもそも、広告の場合、日本チームの勝敗により広告売上(番組視聴者数)が変動する(最小:日本チームが予選敗退、最大:日本チームが決勝進出)ため、サブスクよりもリスクが大きい。
  • 一方、事業規模6,000億円を誇るNHKが、NHK存続の意味として、この手の放送権を買えば良いのにと思う。いまからでも買えば、NHKは国内でヒーローになれる。ただし、こんなアクロバティックな資金投入できる組織ではない。

コンテンツ側視点

  • WBC側からすると、無料放送の廃止により日本におけるWBC人気に陰りが出るという懸念がある。
  • しかし、WBCの母体である米国メジャーリーグは、基本ペイTVでしか見れない。つまり、米国人には、「野球はペイTVで見るもの」という認識があるかもしれない。また、米国の団体が日本の細かな事情を考慮するとは思えない(多分、日本からの送金額だけしか興味がないと思われる)。

ユーザ側視点

  • ネット界隈では、「無料でみれなくしたネットフリックスが悪い」という感じで、バッシングが起こっている。
  • まだまだ、日本では「プレミアコンテンツを無料でみれて当たり前という文化」が深いという印象を受ける。ただし、ネットフリックスを叩いているのは中高年な気もする。若年層は素直に受け入れるかも?
  • ネットフリックはDAZNとは異なり法人契約(スポーツバー等におけるパブリックビューイング契約)が無い。これは、コンテンツとしてマイナス。

メディア・コンテンツ産業全体的視点

関連する誤謬の訂正

  • 誤謬:テレビの強みはリアルタイムの同時体験。スポーツ中継だけはテレビの最後の砦
    • 実際:アメリカでは、30年前からメジャーリーグを含むスポーツ中継は有料チャンネルの独擅場。無料では見れない。
  • 誤謬:ネットの動画視聴は敷居が高い(光ファイバー導入等で面倒)
    • 実際:ネット回線はスマホのテザリングで十分です。ネット費用も楽天モバイル等なら無制限で3,000円程度です。
  • 誤謬:テレビ局がサブスクに対してプレミアムコンテンツに弱いのは資金調達が弱いから
    • 実際:テレビ局の方がSVoD等よりも売上が大きい
        • テレビ広告市場:1.7兆円、SVoD市場:0.6兆円程度
        • 日テレTV広告売上:約2,000億円、ネットフリックス国内SVoD売上:約1,000億円
    • 実際:テレビ局がプレミアムコンテンツに金をかけられないのは構造的なもの
      • テレビ:コンテンツ単位の収支管理
        • 1,000万人視聴者があっても(番組当たり)X億円程度
      • SVoD:加入者数単位での収支管理
        • 1,000万人新規加入があれば(月次)100億円増収

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