漫画村Cloudflare問題についてのまとめ。敬称は省略させて頂きます。
コンテンツ
非表示
タイムライン
- 2010年
- Cloudflare、創業
- 2016年1月
- 漫画村、開設・当初はCloudflareの無料プランを利用
- 2017年3月29日
- Cloudflare、代理店経由で日本における販売を開始
- 2017年6月
- 漫画村、Cloudflareと有料契約
- 2018年4月16日
- 漫画家(たまきちひろ)、Cloudflareに対する情報開示を訴訟(地裁)
- 2018年4月17日
- 漫画村、接続不可能(閉鎖)
- 2018年4月以降
- Cloudflare、漫画村以外の著作権侵害サイトについて配信を継続
- ソース:2025判決文
- 出版社、引き続きCloudflareにCDNサービス停止等を要求する
- ソース:2025判決文
- Cloudflare、漫画村以外の著作権侵害サイトについて配信を継続
- 2018年8月
- Cloudflre、日本国内で日本人営業スタッフを雇用
- 補足:この前にも雇っていた可能性あり
- 出版社、Cloudflareに対し以下を実施
- 著作権侵害の通知
- 訴訟
- Cloudflre、日本国内で日本人営業スタッフを雇用
- 2018年10月
- Cloudflare、漫画家(たまきちひろ)の訴訟に対し「全面的に戦う」と答弁書を提出
- 2018年12月
- Cloudflare、新宿パークハイアットで日本顧客向けイベントを開催
- 2019年7月
- 星野路実以外の運営関係者、逮捕される
- 2019年7月7日
- 星野路実、フィリピンで拘束される
- 2019年9月24日
- 星野路実、日本へ強制送還され逮捕される
- 2019年12月20日
- 竹書房、Cloudflareに対し民事訴訟
- 2020年1月22日
- 漫画家(たまきちひろ)、Cloudflareに対する情報開示が棄却される(地裁)
- 2020年2月20日
- 出版社、2018年8月の訴訟についてCloudflareと和解していたことを発表
- https://hon.jp/news/1.0/0/28108
- https://web.archive.org/web/20220202035131/https://shuppankoho.jp/doc/20200220.pdf
- 補足:内容は「複製の中止」つまり、Cloudflareはキャッシュ配信を止めるが、海賊版サイトのオリジンからの配信を許すというもの
- 出版社、2018年8月の訴訟についてCloudflareと和解していたことを発表
- 2020年7月9日
- Cloudflare、日本支社開設
- 2020年10月
- 著作権法、リーチサイト規制が成立
- 2021年6月
- 星野路美、福岡地裁で実刑判決(刑事):懲役3年、罰金1千万円、追徴金約6257万円、控訴せず確定
- 2022年2月1日
- 出版社(大手4社)、Cloudflareに対し損害賠償を訴訟(2025年11月19日に判決が出たもの)
- 2023年9月22日
- 星野路実、服役を終え会見を開く。再審請求を行う意向を示す
- 2024年4月18日
- 星野路実、17億円超の支払い命令を受ける(地裁、民事)
- 2025年2月19日
- 福岡地裁、星野路実の再審請求を棄却
- 2025年11月19日
- 東京地裁、Cloudflareの損害賠償責任を認める
- 出版社、共同声明を発表
- Cloudflare、報道関係者向けに声明を発表
- 2015年12月4日
- Cloudflare、知財高裁に控訴
関連法規
DMCA セーフハーバー (17 U.S.C. §512)
- 米国において通信事業者等が以下を実施することにより、著作権侵害等から免除される法律
- 通知を受けた後に「迅速に」削除等の措置を取り
- さらに「繰り返しの侵害者を終了する方針」を採用・合理的に実施
- 補足:コンテンツ等の削除要求はTakedownと呼ばれる
プロバイダ責任制限法
- 国内において特定電気通信役務提供者(CDNやISP等の事業者)の法的責任を調整する法律(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)
- 損害賠償責任の制限
- 事業者が適切な手続(下の「送信防止措置」)に沿って対応した場合、権利侵害コンテンツの放置に対する責任を限定する
- 送信防止措置
- 権利者からの通知を受けた事業者は、それが明らかか相当の理由がある場合、該当コンテンツを削除できる(削除に対する法的責任を負わない)
- 発信者情報の開示
- 権利者からの通知を受けた事業者は、それが明らかか相当の理由がある場合、発信者の情報を開示できる(開示に関する法的責任を負わない)
- 損害賠償責任の制限
類似事例
MP3Skull事件
- 概要
- レコード会社が、MP3ファイルのリーチサイトを著作権侵害で提訴。その後、CDN等に対してもサービス提供を止めるように要求
- タイムライン
- 2015年4月
- レコード会社が提訴
- 2016年2月
- 裁判所がデフォルト判決(被告が出廷しなかった)、訴えを認める。
- ただし、被告は裁判所を無視し運営を続けた。
- 2016年?
- レコード会社がCloudflareに対し関連サイトの運用を止めるように提訴
- 2017年3月
- 地裁が大枠を認める
- 2018年3月
- Coudflareが2017年命令の無効化を提訴
- 裁判所がCloudflareの提訴を却下
- 2015年4月
Sci-Hub事件
- 概要
- 有料の科学論文を無料提供していたSci-Hubについて、このサイトにCDN等を提供していたCloudflareに対してサービス停止を要求
- タイムライン
- 2015年
- 出版社(エルゼビア)がSci-Hubに対して提訴
- 2017年6月
- 裁判所はSci-Hubに対して損害賠償を認める
- ACS(学会)がSci-Hubおよび関連会社に対してサービス停止を提訴
- 2017年11月
- 裁判所がSci-Hubに対して損害賠償と関連会社によるサービス停止を認める
- Cloudflareは提訴することなく受け入れる
- 2015年
Arista Recrods事件
- 概要
- Arista Records等がコピーサイトを提訴。これらのサイトにCDN等を提供していた Cloudflareに対してサービス停止を要求
- タイムライン
- 2015年6月3日
- 裁判所は差止がCloudflareにも及ぶと判断
- 2015年6月17日
- Cloudflareは命令修正(先回り的な防御は排除)を申し立て
- 2015年7月
- 裁判所が命令修正を認める
- 2015年6月3日
ALS Scan事件
- 概要
- ALS Scanが、自社写真を無断掲載した海賊サイトについて、その運用に関わったCDN等を寄与著作権侵害で提訴
- タイムライン
- 2016年7月
- 原告が提訴
- 2018年3月
- 地裁がCloudFlareが著作権侵害を支援しうるという可能性を示す
- 2018年6月
- ALS ScanとCloudFlareが和解(最終的な司法判断無し)
- 2016年7月
Mon Cheri Bridals事件
- 概要
- 権利者の写真を無断使用していた模造品サイトについて、このサイトをCDN配信していたCloudflareを寄与著作権侵害で提訴。
- タイムライン
- 2018年11月17日
- 原告が提訴
- 2021年10月6日
- 地裁はCloudflareの寄与侵害責任を否定
- 2021年12月27日
- 原告が控訴
- 2022年2月8日
- 原告が控訴を取り下げ
- 2018年11月17日
- 補足
- Cloudflareが「国際的な判例」としてあげたものだと思われる。
論点
誤解の解消
本件に関しては、いろいろ変な事が言われています。まず、国産CDNを作り運用していた者として、これらを正したいと思います。
大規模配信には国内にあるサーバから配信する必要がある
- マンガ程度のイメージファイルであれば、米国等から配信しても気になるほどの表示遅延は起きません。そのため、権利者側としては、国内にサーバが有るかどうかを論点にするのは危険です。今後、違法事業者は、海外からのみ配信するCDNを利用する可能性があります。
CDNが違法コンテンツを配信すると損害賠償の対象となる
- 米国DMCA セーフハーバーもしくは国内プロバイダー責任制限法により、CDN事業者が侵害申告に対し適切に対応すれば、損害賠償の対象とはなりません。今回の判決は、この侵害申告に対する対応が不十分であったため損害賠償の対象となるというものです。
この判決によりCDNサービスに影響がでる
- もともと、CDN契約には違法コンテンツは禁止という規約があります。そして、一般的なCDN事業者の場合、これに反した場合は、事業部長権限ぐらいで迅速にサービスを止めています。また、オンラインサインアップでない(営業マンを介する)契約の場合、契約者やコンテンツをチェック(与信、反社)し、社内で契約稟議を通しています。
- ただし、オンラインサインアップ契約を利用可能なCDN事業者の場合、本人チェックを行っていません(そういうCDN業者を私は知りません)。これが強制となると、CDN(およびクラウド)業界に大きなインパクトを与えます。
Cloudflareは漫画村の違法コンテンツ配信で大もうけした
- 漫画村の配信量は月間10PB程度と言われています。これぐらいの配信量における配信単価はGBあたり0.2円程度であり、単純計算すると配信売り上げは月額200万円でしかありません。また、与信や料金支払いの問題もあり、一般的なクレジットカードで先払いできる程度(200万円程度)だと思われます。CDN事業者にとっては大きめの案件ですが、大もうけというレベルではありません。
- 参考
- https://bunny.net/pricing/cdn/ 表に出している値段で1PB以上の配信単価はGBあたり0.2セント。10PBとなるともっと低いところが実際のレート。
日本の判決は国際的な判例と一致しない
- ここで国際的な判例(Cloudflareに対する寄与著作権侵害を却下)とはMon Cheri Bridals事件だと思われます。しかし、これは米国地裁レベルの判決(原告側の上告も無し)であり、国際的な判例というのはオーバーだと思われます。
国産CDNを作った人からのコメント
作文中